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しかし、同時に留意するべきなのは、住家被害の規模が応急対策活動の規模に大きく係わっているこということである。やや専門的にいうと、住家被害が応急対策需要の主要発生源になっているということである。
例えば、災害により多数の住家が損壊すると、その結果、膨大な数の被災者や死傷者が出る。そうなると、次に救出・救助、医療救護の活動が必要になる。被災者を収容するため避難所の開設・運営が必要になる。続いて、給食、給水、生活物資の支給およびそれに伴う輸送活動が生じる。これらの後には仮設住宅の問題が出てくる。
このようにみると、住家被害対策は、単に住家損壊による死者や負傷者を軽減するということに止まらず、応急対策需要を劇的に軽減する可能性を有しているのであるが、従来、住家被害対策は個人の領域の問題としてとらえられており、十分な位置づけがなされていなかったのが実情である(阪神・淡路大震災後は住家被害対策を重視する地域防災計画が増えてきている)。
特に地震対策を考えた場合、この問題に正面から向き合わない地域防災計画(災害予防計画)は、今後は欠陥晶といわれても仕方がないであろう(もちろん、この問題の全てを地方公共団体のレベルで解決できるわけではないが)。
(6)問題点6:人的資源の発掘・活性化の方策に具体性が乏しい
阪神・淡路大震災は、行政機関だけでは大規模災害には対応不可能であることを全国民に認識させるとともに、従来にも増して人的資源の発掘・活性化の重要性を明らカ・にした。
ところで、人的資源の発掘・活性化対策は、「防災主体の形成・育成」、「防災教育」、「防災訓練」の三つが柱である。いずれもどこの災害予防計画の中にも記載されている項目である。しかしながら、阪神・淡路大震災が発生するまでは、その重大性に関する認識が低かったせいか、以下の点で具体性に乏しいものが多くみられる。
ア.防災主体の形成・育成
地域内の個人、事業所、ネットワークなどの資源の発掘・活用を図るための具体策に乏しい
イ.防災教育
職員、住民、事業所、子供〜大学生、高齢者、防災リーダー、ボランティアなどの役割、発達段階、ライフステージ、生活圏(行動範囲)に応じた効果的な防災教育内容や防災教育機会の提供などについての具体策に乏しい
ウ.防災訓練
実践的ノウハウ獲得のための訓練となっているか疑間のものがある。訓練形態も個人訓練、小グループ訓練、図上訓練、無シナリオ訓練など工夫の余地は大きい以下、若干説明を補足する。
まず、「防災主体の形成・育成」について考えたとき、阪神・淡路大震災では、倒壊家屋の下敷きになった多数の方が、近隣住民によって救出されており、その数は行政機関による救出者数を大幅に上回るといわれている。このように、阪神・大震災では防災力としての住民の力は巨大なものであったことが判明している。反面、資機材や訓練の不足などから期待されるような活動のできなかった住民も多いといわれており、自主防災組織の結成・活性化などの重要性がクローズアップされた。
また、物資調達の面では広域調達力を有する事業所が大きな貢献をしている。広域調達力を有している事業所の大規模災害時の貢献には大きなものがあることは過去の災害でも観察されており、経験則的なものであるが、この種の事業所と日常から良い

 

 

 

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